被災地レポート 淡路島一宮町

淡路島一宮町

平成16年11月5日 一宮町柳沢の土砂崩落現場

平成16年10月20日、近畿地方を襲った台風23号は各地に深刻な被害をもたらしました。兵庫県内では特に大きな被害を受けた豊岡市、出石町、養父市、西脇市、黒田庄町、三木市、宝塚市、洲本市、一宮町でボランティアが募集され、全国から多数の方が支援に駆けつけました。被災から約2週間が経過しほぼニーズを満たしたため、ボランティア募集を終了するところが多い中、未だ台風の爪あとが残る淡路島一宮町にてたったの1日ですがボランティア活動をすることができましたのでご報告いたします。

ボランティアのきっかけ
今回のボランティア活動のきっかけは11月1日夕方、職場に届いた1枚のFAXでした。内容は11月2日、3日、4日の3日間豊岡市と洲本市にボランティアバスを運行するので現地で活動して欲しいというものでした。翌日、応募してみましたが既に満席で受付は終了したとのことでした。このとき初めてひょうごボランタリープラザの存在を知り、さっそくサイトを見てみると一宮町で11月5日のボランティアが不足しているという情報が掲載されていました。恐らくこれが最後のチャンスだと思い、職場の同僚と2名で応募しました。

一宮町の被災状況
兵庫県が11月7日にまとめた資料によると一宮町の被災状況は次の通りです。

死亡 全壊 半壊 一部損壊 床上浸水 床下浸水
1名 5棟 3棟 12棟 75棟 189棟

マスコミ報道が豊岡、舞鶴方面の水害を大きく取り扱ったのと直後に起きた新潟の震災のため、あまり知られていないのが現状のようです。

現地へ向かう
11月5日午前7時に神戸市の自宅をマイカーで出発し、暇そうにしていた自分の親父も強制連行して、さらに同僚を拾って明石海峡大橋を渡りました。東浦町くらいまでは普段と変わらない光景でした。しかし北淡ICを過ぎて室津PAに差し掛かると道路は1車線規制になり山肌がえぐりとられガードレールをなぎ倒している現場に差し掛かりました。室津PAの下り線側は完全に土砂に埋まり閉鎖されていました。

室津PA付近 土砂が自動車道に流れ込みガードロープをなぎ倒している

ボランティアの集合場所は一宮町多賀の一宮町ふるさとセンターでした。9時30分の集合時間に約30名のボランティアが揃いました。社会福祉協議会の方から作業内容の説明があり身支度を整えて現場に向かいました。

一宮町ふるさとセンターにて 車と徒歩で現場に向かいました

一宮町柳沢の現場
最初に向かったKさん宅は裏山が崩れて自宅の裏を土砂が埋め尽くしていました。建物の裏なので重機を入れることが出来ず手作業で土砂を掘り出し、バケツリレーで運び出すということになりました。すでに作業を開始してから3日目なので、最初は窓の高さまであった土砂の量はかなり減っていました。土砂をショベルですくい上げる作業は簡単そうに思えますが、実際は水を含んでいて粘り気があるので思うようにすくえません。かなり足腰に負担がかかる重労働です。しかし午前中の作業でネックとなっていた大きな木の根をやっとの思いで撤去し、軽トラ5台分くらいの土砂を運び出し、ようやく目途が見えてきました。

大きな木の根がネックになっていました 窓の高さまで土砂で埋まっていました

ちょっと一服
午前中の作業を終了し昼食をとりました。ボランティアの皆さんははじめて顔を合わす人ばかりですが、午前中泥と汗にまみれて一緒に作業をしたことで親近感が沸くのでしょうか、いろいろな体験談を語り合いました。今回のボランティアは若い男性や女性に混じって高齢の方も見えてました。昭和3年生まれの男性は、平成9年1月2日未明に起きたナホトカ号の重油流出事故の際もボランティア活動をされたそうです。また連日泊り込みで活動されている方もおられました。こういった方々が、すごく当たり前に黙々とボランティア活動をされていることに敬意を表します。

一宮町上河合の現場
午後の作業を再開して15分ほどたったところで、全員集合がかかりました。別の作業現場で人手が足りないので応援を求むというものでした。急遽、男性5名 女性3名 計8名の応援部隊が結成され一宮町上河合の現場へ派遣されました。現場は住宅の裏手の田んぼの土手が崩れて大量の土砂が室内に流れ込んでいました。実はこの田んぼの土砂というのが曲者で、非常に粘り気がある粘土質だったのです。足場が悪いため、板を渡して慎重に作業を進めました。また粘土はスコップですくい上げるのが困難で、スコップやバケツにくっ付いて離れないため、思うように作業は捗りませんでした。室内の床上、床下の泥の撤去は、ほぼ完了しましたが住宅を飲み込んだ土砂の撤去は翌日に持ち越しとなりました。

右手の田んぼから土砂が流れ込みました 粘土質の土砂の除去は困難を極めました
泥まみれになりながら黙々と作業を続けます 室内の泥の撤去はほぼ完了しました

作業を終えて
晩秋で日が暮れるのが早いので午後3時30分をもって作業を終了します。泥にまみれた作業道具類はきれいに洗って明日の作業に備えます。被災された方に別れを告げて一宮町ふるさとセンターに戻りました。センターではあめ湯をごちそうになりました。冷え切った身体が温もりとてもありがたい思いでした。その後現地で解散し、現地にとどまり活動を続ける一部の人をのぞき帰路につきました。

使った道具を洗い明日の作業に備えます あめ湯をごちそうになりました

今回の活動を通じて感じたこと
○ ボランティア活動経験者が多かったのか自発的に役割分担がなされ、スムーズに活動できました。
○ 事前に活動内容や持ち物が判っていたので現地であわてずに済みました。
○ インターネットによる募集はとても有効な手段ですが、ネットを使わない人もいますので、マスコミ等を活用して積極的に広報していただけるといいですね。
○ ボランティアでも無理は禁物です。怪我や事故の無いように注意したいです。今回はきつい仕事でしたので、一定時間ごとに休憩を入れていただきましたので助かりました。

ボランティア活動は、他人を援助するという意味合いが強いですが、自分自身の精神の修行のために行っている側面もあるかと思います。阪神淡路大震災を経験した自分としては、災害は二度とあってほしくはないですが、万一災害が発生した場合には、より多くの方に活動していただきたいと感じました。

最後になりましたが台風や震災で被災された方にお見舞い申し上げ、1日でも早く復興されることをお祈り申し上げます。